公開中の邦画「茶々-天涯の貴妃-」を観て来ました。前々から通勤に使用している駅にポスターが貼ってあり、どうにも気になっていたもので…。まだ封切られてさほど経っていないので、混雑しているかなと思っていましたが、どうやら不入りの様子で劇場はガラガラ。おかげで周囲に気兼ねせずにゆったりと鑑賞できたわけですが。

パンフ700円。まぁそれはどうでもいいや。中身は“いつもの”東映時代劇。映像的な見所はラストの大阪城炎上→爆破シーンぐらいでしたが、クオリティはTVレベル。映画としては大したことのない低級なものでしたが、そこそこ面白かったです。最後まで眠くならなかった映画は久しぶりだ。基本的に、組んだセットの中で役者がセリフをかわすシーンが大半を占めるため、ともすれば退屈になりがちな演出だったのですが、そこは脚本が上手い事できていたのでしょうな。場面場面での登場人物たちの気持ちの移り変わりや心理描写に食い足りなさを感じるものの、混乱を招くようなものではない。明快な展開と親切なナレーションのおかげで、歴史にさほど明るくない私でもついてゆく事が出来たわけで。
映画公式:
http://chacha-movie.jp/ 劇中ではおよそ40年という歳月が流れ、織田信長の時代から徳川家康が“大阪夏の陣”で勝利を収めるまでが描かれていました。おのずとダイジェスト的な流れになり、かなりの駆け足だった筈なのだけど、さほど気にはなりませんでした。それは多分、私がこの辺の歴史に思い入れがないからであり、「手軽に美味しいところだけつまめればいいや」という風な思いで見たからでしょう。裏を返せば、マニアックな描写を期待してみるとガックリ来ることは間違いありません。
それにしても――見事なまでに、三世代にわたっての、親と子・夫と妻の物語でしたなぁ。ディテールを追求する作品ではなく、あくまでも映画を製作したスタッフの伝えたい事ややりたい事を、「淀君の生涯」になぞらえて世に送り出された作品な気がします。色々と突っ込みどころや大笑いしてしまいそうなシーン(作ってる側は大真面目なはず)は多かったのですが、今にして思い返せば確信犯的な描写だったのかもしれません。特に、出てくる人間が悉く愚劣な道化のように描かれていた辺り(信長や秀吉の描写は、まさに“バカ殿様”そのものでした)既存の時代劇にあったイメージをぶち壊してやろうという意図があったのでは、とも思います。中村獅堂の演じた家康なんかは、「忍耐の人」と評されがちなもっさりしたイメージとは程遠い、シャープでギラリとした格好良さを見せ付けていました。お約束で塗り固められてはいたけれど、その切り口はなかなか新しかったのかな、とも。
役者陣に関しては、ちょっと疑問の残るものが。主演の“和央ようか”(元・宝塚宙組)の名前は今回始めて知ったのですが、これがまたお世辞にも美人とは言い難(以下自主規制。映画冒頭で、浅井長政の三姉妹が出てくるのですが、あの清楚なイメージのキャストから、なぜああも変貌させてしまうのか…(苦笑。
次女のはつ(富田靖子)はまだいい。問題は三女の小督(寺島しのぶ)だ。三人の中で一番年下の筈が、なぜあんなにも老けているのか、と。おまけに――女優としてなまじ貫禄があるものだから、長女の茶々よりも長女らしく見えてしまうから困り者。寺島しのぶには完全に役不足だったでは? せめて富田靖子と逆の配役だったらば、もう少しは違和感も薄れたろうに…。
また、“大阪夏の陣”という事で真田雪村が後半から登場しましたが、この扱いも拙かった。劇中においては「茶々(豊臣家)を支援するために馳せ参じて、家康を目前にして戦死した傭兵」的な印象しか残らなかったのですから。もう完全にゲームのコマ扱いでしたね…二時間弱いう尺の中でそこまで描ききるのは無理なのは分かるし、史実を元にしている以上出さないわけにもいかないのは分かるけど、あまりにも不憫な扱いだったかと。他にも、豊臣秀頼(中林秀樹)と千姫(谷村美月)もね…三世代に渡る歴史絵巻のラストを飾る世代にも関わらず、その登場が終盤だったがゆえに、上と同じような扱いになってしまったのが残念です。やはり二時間尺の映画でやるような内容ではなかったのかも。
と、好き放題書きましたが、見終わって「金を返せ」とは思わない作品でしたね。やはり東映が制作しただけあって娯楽要素は高めでしたし、頭のくたびれない作りだったかと。高齢者でも楽しめる作りといえば、世間の評価も随分と変わるのではないかと。ただ、海外からの評価はまずされないと思う。理由は色々とあるけども、茶々の母・お市の「子を遺して夫の後を追う」というような描写や、若かりし頃の家康が「豊臣への恨みを忘れまい」と腕を切るシーンなどは、おそらく日本人にしか理解できない描写でしょうなぁ。そういう意味では貴重な映画だともいえます。「淀君」に対してのイメージというのはさほど変わりはしなかったけど、織田・豊臣・徳川が駆け抜けた時代――まさしくその中核にいた女の人生はそれなりに味わえたかと。表面的な安っぽさだけで、この映画が評価されない事を祈ります。
追記:エンドロールの歌は、なんであんなんにしたんだろう…。
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